砂浜始終管見

漫画や映画やゲームの感想を書きます。

山素『時間跳躍式完全無劣化転送装置』感想

 引っ越して初めての夏が来た。

 

 同じ首都圏ではあるが、やはり土地が違うと空気が違う感じがする。

 湿度や風の吹き方といった空気という意味でもそうだが、街と暮らす人々の空気感という意味でもそうだ。

 それにしてもやはり、その土地のことは住んでみなければわからない。もちろん住めばわかると言うものでもないのだが、その地に暮らしたことがあるかどうかで、地理や歴史、名所名跡への向き合い方が変わってくる。

 私にはいわゆる「故郷」のようなものがないからなおのことそう思うのかもしれない。

 

 さて、今回の漫画は山素先生の『時間跳躍式完全無劣化転送装置』。

山素『時間跳躍式完全無劣化転送装置』小学館、2026年

 短編集特有の謎メン表紙

 4篇からなるオムニバス形式。初出媒体はまちまちだが、うち2編はコミティアで発表した作品らしい。常々総集編を作れと主張している身として、こういった形で作品がまとめられることは大変喜ばしいことだ。一方、コミティアの場で発掘したかったという思いもある。

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COMITIA156 雑多感想

 週末、高校の文藝部時代の友人と会うことになった。

 世間では、三十歳になるまでに会わなかった友達とは二度と会うことはない、とまことしやかに言われている。実際どうなのかは知らないが、三十路が人生で一つの節目であることは間違いないだろう。自慢ではないが私は友達が少ないので、今いる友人は大切にしなければという思いが年々強まっていく。

 今やすっかり隔回参加が習慣になったコミティアも、まだ見ぬ漫画を探すことと同じかそれ以上に、大学時代の後輩と会って話すことが重要な目的の一つとなっている節がある。まあアイツ今回は資格試験が近いとかで来なかったんだけど。

 

 というわけで、コミティア156に行ったので買った本の感想を書く。

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塀『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』 感想

 読んだ漫画のちょっとした感想をNotionに書き留めはじめた。

 こちらのブログはまとまった量を書く時に使おうと思っていたら、タイミングがないまま一季節以上が過ぎてしまっていた。別に漫画を読んでいないわけではないんだけどね。

 

 

 さて、そんなハードルを乗り越えて、今回取り上げる漫画は塀先生の『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』。

 

塀『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花 1』秋田書店、2020年
最新刊は7巻

 

 今季アニメも放映している、今ホットな漫画だ。

 

 まず先に言い訳をしておこう。私は百合と酒のことは分からない。本当にまったくわからないので、この記事でもその2点には触れないことにする。

 いや君、そんなことを言ったって、この漫画から百合と酒を抜いたら何も残らないんじゃあないか――そう思われる方がいるのは至極当然、ごもっとも。なので実際、本作の存在は1巻が出たころから知っていたものの、読もうという意欲はなかなか湧かずにいた。

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映画『果てしなきスカーレット』感想

 1週間ほど前、インフルに罹った。

 最後に罹ったのは大学1年の頃だから、実に9年ぶりだ。もともと頑丈で感染症やらに強いことが数少ない自慢の一つでもあったのだが、ここ2年連続でコロナにも罹っているし、いよいよ体にガタがき始めているかと不安になる。

 幸い熱はすぐ引いたが、ずっと寝ていたので体力が落ちて仕方がない。体調が悪いのか、体力がなくて疲れているだけなのか判断がつかずにずっと引きこもってしまったり……。体力を戻すためには外に出て活動するしかないのだが、寒いと外に出るだけで体に負荷がかかる。

 今まであまり感じたことがなかったが、病気をするのは大変なことだ。

 

 

 というわけで、体力を取り戻すために映画を観た。『果てしなきスカーレット』。11月21日に封切となった細田守監督の最新作である。

タイトルはけっこう好き

 ネット上での評判はあまり芳しくない―――いや、かなり芳しくない。酷評されていると言ってもいい。細田守には『ぼくらのウォーゲーム』で私のアニメ映画の原風景をつくってくれた恩義があるので悲しく思う気持ちもあるが、それと作品の評価は別の話なので仕方がない。

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ナツイチ『三咲くんは攻略キャラじゃない 3』感想

 転職をすることになった。

 同じ業界ではあるが今とは違った分野に移ることになる。分野が違えば文化も違うだろうし、前々から関心のあった分野とはいえ特に専門教育を受けたわけではないので、不安半分楽しみ半分といったところだ。……いや、不安6割楽しみ4割くらいにしておこう。

 しかし、次に職場は現職に比べて待遇面は大きく見劣りする。まあ業界的に金が潤沢にあるはずもないのだが、それでもこの会社でこのレベルの給料しか払えないのか……という物悲しい気持ちはある。やはり資本主義は解体すべきだな。

 とは言っても、別に即座に生活に困るほどではない。

 H. D. ソローが『森の生活』で言っているように、豊かさは考えなくて済むことの大きさによって決まる。ソローの意に反して過度に文明化した現代社会の文脈に落とし込んで言えば、スーパーのカゴに割引でない品を入れて何ら呵責を感じなくて済むこと、店先でいちいちその店舗に対応したポイントカードを提示せずに済むこと、本を買う時にいちいち裏表紙の価格表示を見ないで済むこと……。すなわち、逆説的なようだが、金銭の最大の利益とは金銭について考えなくて済むことだ。

 であれば、審判の時はまだ先になるだろう。もし私が収入に困って煩瑣な金勘定をしなければいけなくなったら、この私の選択は間違っていたことになる。

 しかし、ふと冷静になってみると、自分が必死に金勘定をしている姿がほとんど想像できない。首が回らなくなったら首くくるだけかもしれないね。独り身だし。

 

 

 というわけで、今は好きな漫画を好きなだけ買える生活を謳歌することにして、今回の漫画はナツイチ先生の『三咲くんは攻略キャラじゃない』。

 

ナツイチ『三咲くんは攻略キャラじゃない 3』新潮社、2025年
こういう漫画はこういう表紙であるべきなんですよね

 

 ズドンと胸の奥まで響くようなKAWAIIの波動を感じる。これがクールジャパンのソフトパワーか。

 

 もしあなたが表紙の三咲くんを見て可愛いと思ったのなら、単行本を買って損することは決してない。

 三咲くんを可愛く描くことに関して、ナツイチ先生の情熱は紛れもなく本物だ。嘘と虚飾にまみれた現代社会でこれだけは信用に値する。このように心から信じられるものに出会えたことに感謝せねばなるまい。

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Trip to Australia

 オーストラリアに旅行してきた。

 事の発端は昨年のいつ頃だったか、前に一緒に沖縄に行った4人でご飯を食べた時、またどこかに行きたいねという話になったことだ。こういうのは「いつか」「どこか」にしている限り決して実現することはない。さしあたり「どこか」を決める必要がある。

 その時たまたま、4人のうちの1人が席を外していた。そこで、3人で「彼が戻ってきたら『今どこか行きたいところある?』と聞いてみて、答えた場所にしよう」ということに決めた。我々は割とその場のノリで生きている。

 しかして戻って来た彼の答えは「南極」。いやはや、こいつは大物だぜ。まぁ、何も前置きなどしていないからこういう答えが返ってきてもおかしくはない。

 とはいえ南極は流石にハードルが高いので、日本と南極を結んだ線分の一つ手前にあるオーストラリアに行先が決定した。やや記憶があいまいになっているが、だいたいこんな感じの経緯だったはずだ。オーストラリアともなれば旅程もそれなりに大掛かりになり、お盆休みを利用しての8泊9日のオーストラリア旅行計画がスタートした。

 

 というわけで、旅行中に書いた日記(のようなもの)をここに残しておく。このブログの趣旨にはそぐわないような気もするが、他に置いておく場所もないので。

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さとかつ『琉球蟹探訪』感想

 chatGPTなどのLLMが画像を認識できるようになって、動植物の同定のハードルが下がった。

 同定とは言っても大層なものではなく、「あの鳥はツバメの一種か」とか「あの花はカンナというのか」とか、そういうレベルの話だ。LLMに頼らずとも多少知識のある人なら瞬時に判別がつくだろうし、そうでなくともネットなり図鑑なりで調べようと思えば調べられるようなものではある。

 しかし、本当に何も知らない人間は、そもそもどうやって調べればよいかが分からない。どこに着目して検索窓にキーワードを入れればよいか、どうやって科や属のアタリをつければよいか、まずもって見当がつかないのだ。すでに知っている事柄しか調べることはできない、というソクラテスの時代からなされてきた指摘は、検索エンジンの時代にあってもなお有効であった。

 そんな時、写真を撮ってchatGPTに投げるととりあえず答えを返してくれる。写真の精度にもよるがそれほど的外れではない(ように見える)し、もし間違っていてもどこに注目すればよいかを教えてくれたりするのでヒントになる。何より、写真を撮るだけなので「ちょっと気になる」という軽い気持ちで簡単に試せるのが大きい。

 これに限らずLLMは非常に強力で、そのあまりの強力さゆえに知識や思考を外部に移管してしまうようで抵抗を感じなくもないのだが、認識できる世界が広がることそれ自体は素晴らしいことだ。

 今日も近所のキョウチクトウが綺麗に咲いている。

 

 

 さて、今回取り上げる漫画はさとかつ先生の『琉球蟹探訪』。

 

さとかつ『琉球蟹探訪』小学館、2025年
蟹かわいい

 

 本作は2022~2024年に発行した同人誌を集めたもので、内容も各話でほぼ独立した話になっている。

 収録されているのは、ベニシオマネキの主催する「蟹ツアー」に参加する表題作『琉球蟹探訪』に始まり、巨大ミミズハゼ(?)に連れられて地下を探検する『間隙紀行』、シラヌイと名乗る謎の生物との奇妙な共生関係を描く『干潟備忘録』、自然と人間生活が切り離された社会でのサイバーパンク的物語が展開する『テフテ』、そして小蟹たちの「誕生祭」を目撃する『南ぬ蟹探訪』の5本だ。描き下ろしの『南ぬ蟹探訪』は『琉球蟹探訪』の続編にあたるが、それ以外は(主人公・キリコが共通して登場するものの)各話でほぼ独立した話になっている。

(なお、『琉球蟹探訪』と『南ぬ蟹探訪』には同一個体と思しきベニシオマネキが登場するのだが、いわゆる「利き腕」が左右逆になっている。作画ミスなのか、それとも何か意味があるのだろうか。)

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